最高裁判所第二小法廷 昭和44年(オ)1193号 判決 1970年3月27日
上告人
長崎中央信用組合
代理人
中山八郎
被上告人
本田勇男
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人中山八郎の上告理由について。
協同組合による金融事業に関する法律六条によつて準用される銀行法二二条による行政庁の信用協同組合等に対する業務停止の命令は、預金者その他第三者の当該信用協同組合等に対する私法上の権利の行使を制限する効力を有するものではないと解するのが相当である。したがつて、本件の場合、長崎県知事の上告人に対する業務停止命令は、預金者たる被上告人が預金債権の支払を求めるため債務名義を得、それに基づいて強制執行をすることを妨げるものではない。そうとすれば、原判決はその理由において異なるが、被上告人の預金債権の支払の請求を認容した結論において、相当である。結論において原判決には所論の違法はなく、論旨は採用できない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(草鹿浅之介 城戸芳彦 色川幸太郎 村上朝一)